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子のきらう黒き作業衣にしみたるは汗の匂ひとも油の匂ひとも〉。亡くなった父親が昔詠んだ歌を、当時の父親と同じ年代になった娘は読み返した。そして、一番安いたばこだけを楽しみに黙々と働いていた姿に、あらためて深い感謝を抱く▼


きのうの父の日、小社刊の『娘と息子がつづる おやじのせなか』を読み始めたら、止まらなくなった。様々な年代のつづる「父親」が94編収められている。1720編の応募から選ばれたものだ▼



ある息子は、父親の遺品の財布からキチッと畳まれた千円札を見つけた。初任給をもらった時に渡した札だった。「迷ったらトウチャンを真似(ま・ね)ろ。出世はできねえが人の道に外れる心配はねえ」。左官職人だった父親の言葉を胸に畳んで生きてきたそうだ▼



「父の背中」は、その来し方の縮図である。だが自分の背中は自分には見えない。化粧でごまかしもできない。掛け値なしの背中を見て子は育つ。父にはなれても、父たることは、たやすくはない▼



白樺派の作家有島武郎が、子に寄せた『小さき者へ』で言っている。「お前たちをどんなに深く愛したものがこの世にいるか、或(ある)いはいたかという事実は、永久にお前たちに必要なものだ」。『おやじのせなか』の読後にも似た思いが残る▼



父親を亡くした20代の娘は、父が37年働いた町工場を訪ねて初めて気づく。「小さなネジをたくさんたくさん作り、私の頭のてっぺんから爪(つめ)の先まで育ててくれた」。お父さんはきっと、気づかれぬようにそっと、あなたを愛していたのでしょう。




*左官職: 壁を塗る職人」という意味が定着している。左官という職種は、その字を見ただけでは何をする職人なのか分らない。さらに「官」の字がつく。「大言海」によると、宮廷工事の儀式のとき、無位無冠では宮廷内に入れないので、公家の慣習に合せて臨時に仮の官位を左官としたとか、工事の褒美を賜る順が大工、屋根職人、錺職人、壁塗と4番目で、べつに四等官を左官といったためだともいう。もともとは壁大工、壁塗りなどといった職人が「左官」としてはっきり記録されるのは16世紀末のことである。

*白樺派:( しらかばは)日本近代文学の一派。雑誌「白樺」によった文学者・美術家の集団をいう。人道主義・理想主義・個性尊重などを唱えて自然主義に抗し、大正期の文壇の中心的な存在となった。また、西洋美術に関心を示し、ロダン等を紹介。
武者小路実篤・志賀直哉・有島武郎・里見●*1、倉田百三、柳宗悦、岸田劉生、園池公致等


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