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天声人語2007年05月31日(木曜日)付


 部屋の隅で揺れる観葉植物。茎のわきから大きな新葉が手品のように現れ、緑を深めていく。薫風に命が躍る5月の言葉から。

 「子どもは、私たちを『親にしてくれる』大事な先生です……小さな命を大切にして下さい。そして軽率に妊娠、出産をしないで下さい」。熊本の「赤ちゃんポスト」に初日から想定外の「3歳児」。自身も実の親の顔を知らない野田明紀さんが、埼玉版の読者投稿で訴えた。

 チョウが好む植物を校庭や公園に植える計画が東京都品川区で始まった。発案のデザイナー、南孝彦さんは子どもたちの反応に「小さな命にも卵を産むという大きな使命があると分かったようで、うれしかった」

 中国で食用になるところを地元の僧侶に救われたウミガメ。3000キロ離れた小笠原諸島まで泳ぎ着き、卵を産んだ。「しばらく保護して産卵を見守り、8月上旬をめどに海に返したい」と、小笠原海洋センターの山口真名美所長。

 「いろいろなことを忘れてしまう自分が許せない」。山口県光市の母子殺害事件で差し戻し後の控訴審。遺族の本村洋さんは妻と娘の声や癖を思い出そうと、3人で暮らした事件現場のアパートに今も行く。

 兵庫県豊岡市で、国内の自然界では43年ぶりにコウノトリが生まれた。県の担当者、池田啓(ひろし)さんは「地元の人が田植え時期を遅らせたり、散歩の道を変えたりと、『いつか野生に戻す』というコウノトリとの約束を忘れずにいた」。移ろう季節に、生の尊さ、豊かさを思う。〈若葉雨なにかやさしくものを言ふ〉西島麦南(ばくなん)。

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まれにではあるが、時代には意志があるかのように、政治家を生み出すことがある。亡くなったエリツィン・前ロシア大統領は、ソ連を終焉(しゅうえん)させた政治家として、そんな一人に数えられよう。

 貧しい農家の生まれだった。自著によれば、生後すぐの洗礼のとき、司祭が桶(おけ)で水浴させたまま引き上げるのを忘れた。母親が気づき、人工呼吸で命を取りとめたという。厳寒の小屋で、家族は山羊(やぎ)に体をくっつけて暖を取ったそうだ。

 政治家は、大衆の心を瞬時につかむ幸運に巡り合うことがある。エリツィン氏にとってそれは、91年8月の保守派クーデターだった。政府ビル前で戦車によじ登り、巨体を仁王立ちさせて「抵抗せよ」と市民に呼びかけた。大衆の熱狂を一身に受けて、その年の暮れのソ連解体に突き進んでいった。

 だが時代の求めは、そこまでだったのだろう。冷戦が終わると、その後は経済の失敗、流血の武力行使、側近政治……と急速に輝きを失っていった。人気は地に落ち、99年の辞任後は国内でも忘れられた存在になっていた。

 エリツィン氏の人生に、耳慣れたことわざが重なる。オムレツを作るには卵を割らなくてはならない――氏はソ連という固い卵を割る役目を授かり、それを果たして、旅立っていった。

 98年春に来日したとき、首脳会談のあったホテルで、一般の結婚披露宴に顔を出してスピーチする茶目(ちゃ・め)っけを見せた。ホテルのゴルフ場には、来日を記念して「エリツィン桜」が5本、植えられた。今年も立派に花を咲かせたと聞く。

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美食的翻译怎么能够错过?虽然时间不多,一段一段来吧,可颂坊小面包!


三日月はその形から「月」の字を生んだ。出番が日暮れ時なので「夕」にもなった。象形文字の面白さだ。かたやフランス語では、満月に膨らむ途中だから「成長」と同系の名詞となり、同じ形のパンの名にもなった。

20070507从新月的形状产生了“月”的文字,因为出现在傍晚的时候,也形成了“夕”子。这就是象形文字的有趣之处。另一方面,在法语中,新月处在向满月膨胀的过程之中,所以也成为“成长”的同义词,由此也成为相同形状的面包的名字。

 フランス在勤中の昨秋、週刊フィガロスコープが「パリで一番うまいクロワッサン」を発表した。目隠しテストで64店を食べ比べた結果、日本にも店があるピエール・エルメが1位に輝いた。


去年秋天我在法国工作的时候,周刊《费加罗示波器?》发表了名为《最好吃的新月面包》的文章,64家店在盲审测试之下进行了口味比拼的结果是,在日本也开有分店的皮埃尔 爱尔美名列第一。

 同誌によれば、良いクロワッサンは「かじると表層が崩れ落ち、ちぎれば静かに抵抗する」そうだ。パリ6区のエルメ本店で買ってみたら、三日月というよりひし形だった。かぶりつくと、解説の通り皮がサリサリと落ち、中身はしっとりと粘った。パリ一番の月は、食卓をクズだらけにして消えた。

根据该杂志的说法,好的新月面包“咬一口表层就会酥脆剥落,撕扯面包里面就会静静粘连着抵抗。”到巴黎六区爱尔美的本店里面去买来尝试一下,与其说是新月形不如说是菱形。一口咬住面包,就像文章所说那样表皮沙沙落下,内部却略带潮湿地粘连着。最好的新月面包,只在桌子上留下一滩碎屑就被消灭了。

 菓子職人として知られるエルメ氏は、焼き上がりに「手で引き裂いて、かすかな鳴き声を聴く」という。そこまで繊細な一品ではなかったが、仏西部の家庭に居候していた当時、週末の食卓には決まってこのパンが現れた。ゆったりした遅めの朝食に、バターの濃厚な香味が花を添えた。

作为点心师而闻名于世的爱尔美说,“面包烤好之后,用手撕开面包,可以听到面包微弱的低吟”(实在是惹人恋爱的面包啊,嗷嗷)虽然面包并不是纤细到这样的地步的一种东西,在法国西部家庭寄宿的时候,周末的饭桌上一定会出现这种面包。舒适享受晚起的早餐时,面包的浓郁香味更是锦上添花。

 クロワッサンはオーストリアの発祥という。1683年、オスマントルコ帝国軍の包囲を耐え抜いたウィーン市民が、敵のシンボルの三日月をパンにしたのが始まり。形は優美でも「戦いの食べ物」なのだ。

20070506据说月牙面包起源于奥地利,这是在1683年奋力(长期忍受)抵抗奥斯曼土耳其帝国军进攻的维也纳市民将敌人的标志——新月做成面包时开始的。形体非常优美,但也是战斗的食物。

 明日はフランス大統領選の決選投票である。右か左か、男か女か。審判までに残された朝食は2回。大接戦を伝えられる両候補は、いくつ三日月をほお張ることだろう。

明天是法国总统选举的投票时间,是左派还是右派,是男人还是女人当选呢?“审判”之前还有两顿早餐可以享受。即将激烈对决的两名候选人,还能够吃下几个新月面包呢?

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天声人語
2007年05月03日(木曜日)付

没有时间,就先翻译一段吧,总比什么都不做就这样一天一天过去的好。

 朝日歌壇賞と俳壇賞の二冠を持つオランダ在住の歌人、モーレンカンプふゆこさんの短歌に、〈窓口で法律用語を調べつつ日本国籍破棄を告げけり〉がある。33歳で異国に帰化した際の、凜(りん)とした決意だ。

 作者はしかし、森で拾った木の実にまで望郷の念を募らせもする。〈手の中に団栗(どんぐり)といふ故国あり〉。ふゆこさんが思い続ける日本は、いつまでも、海外の同胞が慕う国でいられるだろうか。

 

パリ駐在から帰国し、3年ぶりに住んだこの国は改めて新鮮だった。朝のホームに整然と並ぶ人たち、静かな満員電車。小ぎれいで安全な街、眠らぬコンビニと自販機。このささやかな日常の安定こそ、守り伝えるべきものに見える。



从巴黎回国后,阔别三年的国家重新变得新鲜起来。清晨的月台上排列整齐(等待电车)的人群,满员却安静的电车,干净而又安全的街道,全年无休的便利店和自动售货机。正是这样细微的日常的安定,可以看出应该守护和传承的东西。

 国籍を捨てて、なお残る祖国とは何だろう。山河や文化、同じ言葉を話す懐かしい人々。その一切がつつがなくあるために、国家の仕組みと約束事がある。軍事同盟が「傘」なら、平和憲法は「繭」のように、日本社会に寄り添って平安を包んできたのではないか。

 窮屈な繭を抜け出し、傘の下で舞うチョウになりたいと欲する人もいる。だが、世界の現実に合わせて理想を遠慮すれば、情けない現実が大きくなるだけだ。

 朝日俳壇の選者だった石田波郷(はきょう)に、「焦土諷詠(ふうえい)」と称される作品群がある。〈香水の香(か)を焼跡(やけあと)にのこしけり〉。廃虚から書き起こした香り高い志(高洁之志)は、四季の美しさや産業技術と並ぶ財産だ。世界がこの水準に追いつくまで、あるべき姿を輝く繭から発信する。

 ここで悠然と待つのが人類愛にかなうと思うが、どうだろう。

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「やがて、山塊に縁取られた巨大な容器に、水が満々とたたえられ、残照をあびて盛りあがり、あふれんばかりになっている光景がひろがった」。辻原登さんが昨年、本紙に連載した小説「花はさくら木」の一節だ。主人公の一人、田沼意次が京から琵琶湖畔に向かう時の状況を、こう描写している。



“不久,水注满了众山环抱的巨大容器(湖泊),在夕阳的照耀之下潮起潮落,水面几乎要溢出堤岸的景象展现在人们的眼前。”这是辻原登先生去年在本报连载的小说《花是樱木》中的一节。主人公之一的田沼意次从东京回来前往琵琶湖的时候所描写的状况。

 現代でもJR湖西線の鈍行列車に乗れば、1時間近く車窓を占拠する湖の大きさが感じられる。その北西岸、滋賀県高島市マキノ町の浜辺が今年、「快水浴場百選」の一つに選ばれた。水質や景観などをもとに、環境省が全国から選んだものだ。



在现代乘坐着JR湖西线的慢速列车,笔者震撼于车窗外近一个小时的时间都被占据着的湖面之巨大。在湖的西北岸,滋賀県高島市牧野町的湖滨,今年被评选为“快水浴池百家”之一。这是环境省以水质和景观为基准从全国选拔出来的。

 海水でなく、「快水」としたのは、川や湖も選考対象にしたから。しかし淡水で選に入ったのは、マキノ町だけだった。海に比べ、川や湖は生活排水の影響を受けやすいためだという。




由于并不是海水,所以叫做“快水”。河和湖也成为了考虑对象。但是牧野町是唯一一个入选的淡水浴场。大概是因为和海水相比,河和湖更容易受到生活排水的影响(污染之类的原因吧)


 7月に入ったきのうは、各地で海開きや山開きの行事があった。マキノ町でも浜開きの神事が執り行われ、水の安全を祈願した。小雨交じりの曇り空で、残念ながら観光客の姿はまばらだった。



进入七月份,各地都开始了开山开海仪式。牧野町也举行了开河仪式,祈祷水的安全。天空当中阴云密布下着小雨,遗憾得很,基本上看不到观光客的身影。


 

ちょっと水に入ってみたが、まだ少し冷たい。透明度はさすがで、ゴーグル越しに大きなコイ2匹が泳いでいるのが見えた。クラゲがいないのもうれしい。プール感覚だが、もちろん塩素臭さはない。水からあがっても肌がべたべたしないのが心地よい。まさに、快水だった。



尝试着进入水中,还是感到有一点寒冷,水的透明度名不虚传,透过潜水镜可以看到两条非常大的鲤鱼在游泳,没有海蜇也让人感到很高兴。感觉就好像是在游泳池里面,当然又没有氯化物的气味。从水里出来皮肤也不会感到粘腻,心情非常的好。果然是“快水”啊!

 こんな、いい環境のせいなのだろうか。自分の流した水がすべて、この「巨大な容器」に入るのかと思うと、湖岸の宿でも洗面やシャワーの際、ふだん以上に気をつかっている自分に気づいた。



也许是因为这里环境实在是太好了,想到自己使用过的水全部都会流到那个“巨大的容器”里面,住宿在湖边即使是洗脸和洗澡的时候,也会比平常更加得注意了。


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ふち‐ど・る【縁取る】

[動ラ五(四)]縁をつくる。特に、物のへりや周りに色を塗ったり布切れをつけたりして細工を施す。「袖口をレースで―・る」

ゴーグル【goggles】

オートバイに乗るときやスキー・登山などに使用する風防・紫外線防止用めがね。
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